本の感想#39

D a t e    2017/8/22

 東京湾景 吉田修一 新潮文庫 2006/7刊(平成15年10月新潮社)
  2917/8/10 高田馬場芳林堂   8/22読了

  東京湾に隣接した船積貨物倉庫
  空き缶が倒され自分たちのいた場所が、いきなり垂直な面になった群がっていたアリたち

 「海岸浴場」 天王洲アイル駅から浜松町駅へ
「世界各地から海を渡って届けられるこれら貨物を、まるで自分へのように亮介が扱っているように」

品川ふ頭、お台場そこは東京湾(東京港)をはさんでわずかな距離だが全く違った世界。
そして品川ふ頭で働く若者とお台場で女性。サイトで知り合い出会うが女性は偽名をつかいながらも
二人の関係は深くなっていく。深くなりながらもお互いに将来にむかっての不安はある。

女は男に「いいよ。もし本当に亮介がそこからここまで泳いできたら、絶対に、亮介のこと
ずっと好きでいる」

 話はここで終わっている。実際に品川ふ頭からお台場までは泳げない距離ではないらしい。
今までの人生は違いすぎる。泳ぎ切ったあとでも試練は続きそうな気がする。
あとは他の読者も気になるようで解説者(文芸評論家の陣野俊史)は
「さすがその後の二人のことは、作者に訊くよりほかあるまい」と解説文を締めている。