D a t e 2023/04/29
荒地の恋 ねじめ正一 文藝春秋 2007/9刊 オール読物2003/2~07/01
主人公の死 そのお別れ会
「私、北村さんの恋人だったんです」
「そうですか」「お名前は」
「これ、ぼくの名刺です。何か聞きたいことがあったら、かまわないから電話してくださいね」
「北村太郎を幸せにしてくれて、ありがとうね」
会はまだ続いていたが帰ることにした。せっかく休みを取ったのだから今夜は揃って外へ
食べに行こう、と夫が言っていたからだ。
「今日はママとごはん」娘の真理も楽しみにしていた。
幸せにしてくれてありがとうね。
どこかにいる北村さんに向かって、私はつぶやいてみた。