「問題はロシアより、むしろアメリカだ」

エマニエル・トッド、池上彰   朝日新書  2023年6月刊
を読んでなんとなく理解した一つの点

「GDP(国内総生産)ではかる国力、少し幻想があったのではないか。
例えば『高額な医療費の半分』、『弁護士の活動によって生み出される富』
『世界一収容人数を誇る民間刑務所』『2万人近くいるエコノミスト』
・・・などサービス部門のGDPにしめる大きな部分・・・水蒸気みたいなもので、リアル経済における生産力(武器の生産能力でもある)を図る尺度としては効力を失っている。つまりアメリカの実際の生産力はかなり低下している」

GPDではかる経済規模、ロシアは欧米に比べはるかに小さく、経済制裁にもかかわらず最近の状況・・・
米、野菜、ほかの物価高に苦しむ日本
これもサービス経済重視・・・便利さ、快適さを求めるあまり日本も実際の生産力は落ちている結果ではないのかなと思った。
なければ昔安い外国産を求めれば済んだが・・・

迷子預かり所

歳を重ねると人の名前が出てこないことが日常茶飯事。

「そんなふうに忘れられた名前たちは、どこをさ迷っているのだろうか。
世界の果てには、迷子預かり所ののようなところがあって、そこに集まっていつか思いだしてもらえる日が来るのを、静かに待っているのかもしれない。預り所の片隅には、長い年月にわたり忘れられ続けている名前たちが、息をひそめ、肩を寄せ合っているのだ」
・・・小川洋子さんの「妄想気分」というエッセイ集から

忘れた名前、思いだせない名前、消えてしまったわけではないのだ、
これを読んで少し気が軽くなった気分だ

タヌキとムジナ

先日埼玉県の川島町を歩いた。そこにある字「上狢」・・・

この地名をみてムジナについて考えてみた。
新明解国語辞典には
① タヌキの異称。「同じ穴のー」②アナグマの異称。
とあるがタヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科で生物学的には異なる。しかしことわざは「ムジナ」を狸やテン、ハクビシンなどの穴を掘って生活する哺乳類動物の俗称として利用。一般的には狸もムジナも区別されずに考えられている。

昔、「たぬき・むじな事件」という有名な裁判があった。
事件があったのは栃木県の大芦村、今の鹿沼市。
当時タヌキは狩猟法上、捕獲禁止だった。そういう状況で被告はムジナ・・狸とは異なる動物と認識して、捕獲して捕まったのだ。
その大審院判決文の一部
「狸、貉(むじな)の名称は古来併存し、我国の習俗此の二者を区別し毫(いささか)も怪まざる所なるを以て、狩猟法中に於て狸なる名称中には貉をも包含することを明(あきらか)にし、国民をして適帰(てつき)する所を知らしむるの注意を取るを当然とすべく、単に狸なる名称を掲げて其の内に当然貉を包含せしめ、我国古来の習俗上の観念に従い貉を以て狸と別物なりと思惟(しい)し之を捕獲したる者に対し刑罰の制裁を以て臨むが如きは、決して其の当を得たるものと謂(い)うを得ず」
— 判決文から一部抜粋

川島町上狢・・・自然堤防上の集落